消化器内科:潰瘍性大腸炎
- 若年者に多いが中年期に増加する。
- 主な症状は腹痛、下痢、下血です。
- 直腸から大腸にかけて炎症が起こります。
- 薬で治らない場合は外科的治療を検討する必要があります。
- 薬の減量や中止は再発の原因になります。
- 腸に良い、刺激の少ない食べ物を心がける
若い人に多いが中年から増える
大腸に炎症が起き、大腸の表面の粘膜に発赤、びらん、潰瘍ができ、腹痛や下痢、下血が起こる病気です。 若年層に多くみられますが、最近では中高年層にも増えています。
主な症状は腹痛、下痢、下血です。
極度の疲労、睡眠不足、食物抗原、伝染病などのストレス状態になると、遺伝的素因で発症する可能性があると考えられています。 腹痛、下痢、下血が主な症状ですが、症状が強くなると、発熱、動悸、倦怠感などが出てきます。 また、カンジダ症、関節の痛み、皮膚の炎症などが現れることもあります。 下痢や下血がある時期を活動期といい、内視鏡検査でこれらの症状がなく、症状が消失した時期を寛解期と呼びます。
直腸から大腸にかけての炎症
発症の経緯や現在の症状などの臨床症状を知ることも大切ですが、確実な診断をするためには採血、便潜血、大腸内視鏡検査(生検病理検査も含む)を行う必要があります。 基本的には直腸から大腸に連続した炎症が見られますが、直腸だけに炎症があるもの(直腸炎型)、直腸からS状結腸、下行結腸に炎症があるもの(左側結腸炎型)、直腸から大腸全体に炎症があるもの(全結腸炎型)、などがあります。 (図1)
Fig: 潰瘍性大腸炎の治療法
「潰瘍性大腸炎をお持ちの方へ」より引用。 治療のために知っておきたい基礎知識 第2版』(難治性炎症性腸管障害研究会(鈴木班)) ”
薬で治らない場合は外科的治療を検討する必要がある。
軽症から中等症の場合は、5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ、アサコール、リアルダ)の投与や、座薬・浮腫剤治療を実施する。 潰瘍性大腸炎のほとんどは5-アミノサリチル酸製剤を正しく使用することによってコントロールされます。 しかし、効果が不十分な場合は、ステロイド剤の内服・貼付・浣腸療法や白血球成分除去療法を行います。 これらの治療で治らない場合は、生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)や免疫調整剤(タクロリムス、シクロスポリン)を用いて、炎症を強く治します。
再発を繰り返す場合は、チオプリン製剤(イムラン、アザニン、リケリン)を使うこともあります。 これらの薬物治療がうまくいかない場合や、多量の下血や強い炎症で大腸に穴があいている場合、腸がんを合併している場合などは、外科的手術が行われることがあります。
Fig: 潰瘍性大腸炎の治療法
「潰瘍性大腸炎を持つ人のために」より引用。 治療のために知っておきたい基礎知識 第2版』(難治性炎症性腸管障害研究会(鈴木班)) ”
薬を減らしたり止めたりすること自体が再発の原因になります。
薬で症状がよくなっても、大腸で炎症が再発することがあるので、一定期間、再発予防のための治療を続けることが大切です。
薬で症状が治まっても、大腸の炎症が治まるまで数ヶ月かかることがあります。 そのため、薬の量を減らすと、再発する可能性があります。 薬の量を減らしたり、止めたりする場合は、主治医とよく相談してください。 症例によっては、当面、5-アミノサリチル酸製剤を継続して経口投与することも検討されています。
腸にやさしい食事への配慮
下痢や下血の症状があるときは、腸管を刺激しないような軽度の食事が大切ですが、症状が改善し、内視鏡や生体病理検査で炎症の改善が確認されれば、食事の制限をしなくてもよいでしょう。
参考 「潰瘍性大腸炎を持つ人のために」より引用。 治療のために知っておきたい基礎知識 第2版 難治性炎症性腸疾患研究班(鈴木班)」(厚生労働省「難治性炎症性腸疾患研究班」ホームページ、患者・家族向け情報(http://ibdjapan.org.patient/))より引用。